世紀のリノベーション第5話

2014年4月23日 by ジャック

解体工事が終り、いよいよ本格的に工事の方が進んでいるT様邸。

今回のリノベーションにかける想いをお届けしたいと思います。

 

今回の内容もとても興味深いものとなっていますので是非お楽しみください。

 

 

<第五話>リノベーションと設計コンセプトの肝

今回のリノベーションで最大の決断は、空調に高価な光冷暖システムを導入したことです。そこでランニングコスト(=電気料金)を下げるには家全体を高断熱、高気密化して1階全体を魔法ビン状態にしなくてはなりません。

ここまで来たら意地です。今までの住環境とは全く違う別世界の価値観の家づくりがしたいと思うようになりました。その発想から生まれたのが次の5つの肝(コンセプト)です。

 

『第1の肝』は、築後30年の住宅を改築して今後30年住むことが出来る60年住宅にする。

元来日本の軸組みハウスは、60年以上持つと言われています。外壁、軸組みは再利用しますが、電気設備、水道設備は全てやり替えます。そしてあと30年死ぬまで住める家にすることを第1の目的として家づくりを目指しました。

 

『第2の肝』は、年中春の気候で過ごす室内環境にする。

せっかくリフォームするなら、間取りの変更だけではもったいないと考え、導入した光冷暖システムです。夏は軽井沢で冬は沖縄で生活しているような室内環境が自宅で作り出せたら月1万円程度の電気代は安いものです。年中ステテコとTシャツで暮らし、年中夏布団で寝ることが出来る室内環境。これが私の夢です。

 

『第3の肝』は、高断熱・高気密住宅に改築する。

一般に断熱を語る時、材質や熱伝導率で分類していますが、私は施工方法で分類します。

一般によく使われるのがウール系の充填断熱です。この工法は隙間の処理が難しいので充填工法は止めます。そこで最近注目されている発砲系現場吹付(吹込み)工法を採用します。その中でも一番㎡単価の高いカナダの“アイシネン”という断熱工法を採用します。なぜなら発砲系断熱工法はあらゆる隙間にウレタンが侵入して高気密住宅になるからです。高断熱、高気密住宅は健康と深い関係にある重要なポイントです。ここは金を惜しまず最高級の断熱工法に賭けてみることにします。

 

『第4の肝』は、自然素材を用いた内装材を使用する。

決まって地場工務店のリフォームの売りは間取りの変更と壁は漆喰、床は無垢材、天井は・・・となります。大手メーカーなら、壁にタイルや天井に板を貼って高級感を演出しますが、我が家は見せる家ではなく住まう家ですから、こんな所に金を掛けません。そこで内装材の色彩配分を70:25:5の黄金比率で仕上げることにします。床(ラーチ)、壁(漆喰)、天井(チップクロス)の白色系が70%を占めて、空間の広がりを演出します。造作家具と巾木がミディアムブラウン色の25%を占め、白色系を引き締めます。残り5%がアクセント色でダークブラウンのAPW窓枠です。以上のような色彩配分で室内の色調を統一することで、高級感を見せることにしました。こだわりのスパイスとして床材はラーチ(唐松)窓枠建具枠は桧(ヒノキ)を使い高級感を味わうことにしました。

 

『第5の肝』は、生活感のない家に仕上げる。

これまで30年暮らしてきた家は生活感がありすぎ、いらない物の貯め込みすぎ、綿ボコリが溜まりすぎ、と一緒に生活していたことに気が付きました。そこで人生最後の改築はすっきりした、生活感のない明るい家に仕上げたいとの思いで次のような設計を行いました。

 

①     脚なし住宅

床に一切物を置かない、ルンバ1台で完全に掃除が出来る家にします。ですから食卓以外は全て壁に取り付け、床に障害物のない中空脚なし住宅にします。

②     家具なし住宅

チリボコリの原因は掃除の出来ない家具の裏です。そこで家具は一切置かず、収納庫に片付けます。唯一床に置くのは冷蔵庫だけです。これでホコリとおさらばです。

③     天井すっきり住宅

室内照明は天井から垂れ下がるシーリングライトは止めました。全室がLEDダウンライトで埋め込みます。これで天井はすっきりフラットです。

④     明るい住宅

部屋間の仕切り扉は全て透明ガラスです。脱衣室とトイレは曇りガラスです。見せる住宅ではありませんが、見せられる住宅です。プライバシーより明るさ優先です。

 

以上のようなコンセプトの基、1年かけてプランニングして現在改築進行中です。私は建築の素人で、頭で考えたプランですから、住み良いかどうかは今後の体験待ちです。

 

話の続きは完成した家で生活を体感してみて以下の話を発表して行く予定です。

 

第6話:快適性と健康の追求

第7話:アンチエイジングな家

第8話:夏を過ごしてみて

第9話:秋を過ごしてみて

第10話:冬を過ごしてみて

第11話:おわりに

 

 

T氏プロフィール

昭和56年 兵庫県から宅地分譲地を購入し、翌年三田市内の工務店で新築する。

これを期に神戸市から三田市に移り住んだ三田歴32年のニュータウン1号族。

60歳を前に築30年住宅の活用方法を『快適と健康』に的を絞ったリノベーションを立案し、この度の改築プロセスと効果について公開することを思い立つ。

本業は土木・電気・管工事の設計監理業務

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